第13回

わらしべ長者風味
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知床半島のどんづまりの相泊温泉。「あっち向いていて」がまかり通ります。
 与論島に無くて北海道に多いのが温泉。独断と偏見で言うと、一番素敵な所は知床半島の「熊の湯」ではなかろうか。キャンプ場の直ぐ横にある露天温泉。嬉しい事に、キャンプ場も温泉も無料だし、温泉は地元の羅臼(らうす)町の人達が大切に守っていて、管理も行き届いている。それでいて、観光バスが立ち寄らない静かな秘境だ。100kmマラソンの後、ここで3泊して疲れを癒した。正に最果ての天国である。
露天温泉だけなら、知床半島の太平洋側で、自動車道の行き詰まりに有る相泊(あいどまり)温泉は、波打ち際にある小さな温泉。目の前が直ぐに太平洋で、北方領土の国後島が見える雄大さ。但し脱衣所も蓋いも何も無い。スットントンの大らかさだが、キャンプ場も無いのが残念。

 知床半島の付け根辺りの漁港に、水揚げ中の漁船が見えた。どんな魚が獲れたのか興味があったので、車を止めて見物に行ったら、カニや大きな魚がいっぱいのようだ。「沢山獲れましたネー」と声をかけると、「何処から来たのか?」「兵庫県から・・」そうしたら「遠い所からご苦労さんだな。これを今夜のおかずに・・」と言って船から大きな魚とカニを渡された。魚は「ホッケ」といって40センチ程のを6匹。一度に持てないので、岸壁に置いたまま車へ袋を取りに戻って来ると、カラスが一匹のホッケを咥えて逃走中だ。重過ぎる獲物を引きずって行く姿を見て、漁師さんは「あっはっはー」と高笑い。


ホッケの調理中。夏でも夜は冷え込んでくるので、テントの中から・・
 佐呂間町で頂いた牛乳が美味しかったので、道端の酪農家に寄って牛乳を分けてもらえないか尋ねてみた。奥さんが出てこられて「丁度出荷したところで残念ですが・・」
 やむを得ないけれど、それでもホッケが5匹も有って多すぎるので、「1匹食べてください」と渡して帰りかけたら、「これをどうぞ」と。バターを一箱頂戴してしまった。

 標茶町は釧路湿原の上流部にある。観光課に問い合わせの手紙を出したのは、釧路湿原近辺の情報が欲しかったのだが、親切なガイドの手引きのご返事を頂いたので、そのお礼にと町役場に寄った際に、残りのホッケの内の3匹を「助けて下さい」と言ってお渡しした。
  そこから教えて頂いたキャンプ場までは20km余り離れていた。テントを張って夕食の支度をしていると、先ほどお会いした観光課の人が車でやってきた。何事が起こったのかと思ったら、「おかずにどうぞ」とジンギスカン用の羊肉を1kg程とヨーグルトを下さった。遠い道程を厭わずに、わざわざ届けてくださって、本当に有難うございました!!
 本場の羊肉は、癖も無くて柔らかくとても美味しく、こんなの初めてで、すっかりジンギスカンのフアンになってしまった。ホッケも当然バター焼きにして風味万点。

夜のマイ・テント。食べ物の残り物は取り込んでおかなければ、キタキツネに荒らされてしまう。
 でも、家へ帰ってから、近くの店でジンギスカン用として売っている羊肉を食してみるが、あの時の味とは違うのは・・・どうしてだろう? 2004.08.02 亀野稔)