第45回

与論島とは大違い
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お土産をいっぱい持って いよいよ搭乗 お世話になりました


与論島のリーフが眼下に小さくなっていく 感傷的瞬間


フライト中に夕暮れを迎え 次第に暗闇に


夜の伊丹空港に着くと寒さが・・


マサ子さんとキビ刈りに 特別に甘いところを
 ヨロンマラソンも何とか無事に終わって3月9日、いよいよ与論島を去る日がやってきた。島の東部にある楽園荘から与論高校の前を通り過ぎる辺りからは、茶花の海が一際鮮やかに見える。この景色にも暫くはお別れか。これから帰る関西地方の気温に合わせて下着など冬用を着込んでいるので、車の窓からの暖かい空気にマッチしないがしようがない。
 いっぱい頂戴してしまったお土産で、来た時よりも重くなったリュックサックを背に飛行機に乗ると直ぐに、窮屈な空間で強烈なGでシートに押さえ付けられ、やがて大きく旋回すると与論島のリーフが眼下に小さくなって行く。少々感傷的になる瞬間だ。
 乗り継ぎの那覇空港でジャンボジェット機に乗り込むと、今まで暑く感じていた旅装が何でも無いように思えてくる。機内の温度がかなり低く設定されているようだ。
 出発したのは午後だったが、太平洋を飛んでいる間に夕暮れを迎え、あたりは西の空を残して急速に暗くなっていき、和歌山の上空辺りでは真っ黒、地上には僅かに点々と明かりが見え、大阪に近づくに従って光の量が増え、車のライトの白と赤の線があちこちに交差し、建物の姿がはっきりと分かるようになると伊丹空港だ。光の洪水の中に着陸すると、冷たい空気に包まれて「おおー、寒いなー」
 眼前に自動車群が怒涛のように押し寄せて来て、圧倒されてしまう。たった10日間ほど見なかっただけなのに、全然違う景色に見える。

 電車に乗ると、車内アナウンスは携帯の使用を自粛するように告げているが、前の席に座っている10人程の内の半分は携帯の小さい画面を見たり、ボタンを押したりしているのにはうんざりする。残りの半分は居眠り。都会人は忙しくて、疲れているんだ・・・・・

 「ピーポーピーポー」救急車のサイレンが度々聞こえてくる。与論島では滅多に聞くことが無かった忙しない音だが、誰かが助けを呼んでいるのだろうか。
 音といえば、自動車の音以外に、当地でヘリコプターの轟音が激しい。明石海峡大橋が有るので、観光取材に飛び回るヘリコプターは、何時までも旋回していて迷惑この上ない。特に大きな音を出すのが航空自衛隊のヘリコプターだ。我が家の上空が航空路になっているらしく、頭の上を通り過ぎる時のエンジンの排気音が民間の物に比べると、車で言えば乗用車とトラックの差以上で、パタパタパタッ・・・と凄い。与論島では、ヘリコプターの姿を見る事はなかった。
 見上げれば、真っ白な長い飛行機雲が、頭上から南西の空の彼方へと伸びて、やがて消えてしまう。伊丹空港から飛び立った旅客機の航路らしいが、ジェット音が落ちてくる。

 久しぶりに明石の大蔵海岸を散歩する。海の色がどす黒いし、明石海峡を往来する大型船が多い。3月には、旬のイカナゴ漁の漁船が何十隻も出ていて、そのエンジン音がこれまた凄い。期間限定とは言え、リーフに砕ける太平洋の波音とは異質の、海全体から音を発生させている。とかく人工的な音の多さには閉口するが避けようが無い。

 前に与論島は「かぜしま県」に有ると言ったが、海抜100mも無い島だから、太平洋や東シナ海から吹いてくる風は、何の抵抗も無く通り過ぎて行くから中途半端なものじゃない。ヨロンマラソンの当日の風速が12mだからと言ってオタオタする方が違っているのだ。
 それに較べたら、当地では吹くのはそよ風程度か。それでも明石海峡の狭い隙間をすり抜けて行く冬の西風は空っ風で、与論島と良い勝負かもしれない。

 新聞紙上では犬をペットにしている数は、全国で1200万匹と伝えている。与論島では殆ど見かけなかった。当地では、人間が散歩するのは犬の為かと思われるほど、犬を飼っている人が多くなった。それは犬を癒しの対象としている人が増えたせいだ。最近の子供達は親の言う事を聞いてくれないが、犬は飼い主に背かないからだとか。それもまぁ良いだろう。しかし、犬の落し物の後始末をしない不心得な人が増えている。道端の看板に「犬は悪くない 飼う貴方の責任です」とある。そうだ、そうだ。
 最近では、「犬が歩けば棒に当たる」ではなく、「人が歩けば(犬の)糞を踏む」

 前後するが、帰る日の朝、マサ子さんとキビ刈りに行った。お土産に特別に糖度の高い所を選んで切り出したのを、宅急便で孫の家へ送って頂いたのだ。京都府の小学校6年生の、孫の同級生30人に40センチ程の長さのキビが一本づつ、お土産としてプレゼント。
 それを食べた感想は、「甘すぎるー」「むくのがめんどう」「かたい」など。中には慣れてくると、おいしさがわかってくる児童もいたそうだ。
 甘すぎると言ったり、硬くて食べ難いものを敬遠する近頃の子供達の風潮は、私から見れば贅沢になったもんだと慨嘆するのみ。しかし「キビをかじって歯が折れたから弁償しろ」などと言われたらどうしょう。

 与論島から帰って来て「大違いやなー」と感じた違和感を、あれこれゴチャゴチャ取り上げたが、殆どは与論島では当たり前の事ばかり。帰って来たら、その当たり前が懐かしくなってくる不思議。たった10日足らずの与論島だったのに・・・ (2005.04.09 亀野 稔)