番外編 4

カヌーの話
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「暮らしの手帳」の記事を読んで これなら出来る


本流に乗り込んだら 又「沈」
救命胴衣を着けているから平気だが


改造したフレーム 新しいベニヤ板を取り付けて幅を広く


嫌がる家内をテストパイロット?にして安全運転の確認中


キャンプサイト カヌーは車上に括り付けて

 「寒い時には南の島へ、暑い時には北の北海道へ」と言うのが私の基本的な考え。与論島の話から少しずれるが、夏の話題としてお許しを頂いて・・・・・

 サロマ湖100kmウルトラマラソンを終えた後の次の目標が、釧路湿原を手製のカヌーで漕ぎ下る事だった。(12回、13回参照) 塘路湖にはカヌーステーションが有ることは標茶町観光課から頂いた資料で分っていたが、一人旅の川下りが可能かどうか不安だった。ましてや手製のカヌーでである。

 カヌーの楽しみは、大きなフェリーなどの高い目線と違って、水鳥と同じ高さでの視界の水面を、音も無く移動する楽しさではなかろうか。子供の時から海の近くで育ってきたので、舟は大好き人間だ。出来ればヨットが欲しいと考えた時もある。最近西回り向り無寄港世界一周単独航海を無事終えて西宮に帰って来た堀江謙一さんが、始めて太平洋単独横断に成功してニュースになった頃だ。
  やれば出来るものだな。それなら私もと、その気になって、造船所へ話を聞きに行ったりもした。でも、ヨットを作る費用よりも、港に係留したり、船底に付く海藻を取ったり、ペンキを塗ったりする維持費が大変な事が分ってきて、諦めざるを得なかった。係留場所にしても、申し込んでから何年も待たなければいけないのが実情で、とても手におえるものではない。よしんば係留場所が確保出来たとしても、その費用が、家を借りる方が安い位とは、どもならん。

 定年前にうつ病になって半年ほど休職したことがある。回復期の手持ちぶたさ解消としてやり始めたのがカヌーの製作だった。組み立て式の、所謂カヤックなので、ヨットみたいな係留場所の心配は要らない。「暮らしの手帳」という雑誌に作り方が載っていて、早速ベニヤ板を切ったり張ったりして、カヌーらしき形が出来た所で復職してしまい、定年になるまで手付かずのままだった。

全ては定年後から始まる。悩んでいたうつ病もけろりと良くなってしまった。勝手なものである。放置していた作りかけのカヌーも、あっという間に完成して、早速近くの川で進水式?をやった。全長4メートル、重量16kgで持ち運びも簡単で、狙い通りだ。
 ところがである。水面に浮かべ、乗り込んだ途端にひっくり返ってしまった。文字通りの洗礼とは、少々手荒い。公園の池のボートとは違って、左右のバランスの取り方が微妙で、慎重な体重移動が求められるようだ。この辺りが先生を持たぬ弱みかもしれない。探せば「何とか教室」の類はいっぱい有るけれど、今更窮屈な思いはしたくない。幸い時間はたっぷりある。試行錯誤の連続であったけれど、苦労して覚えた事の方が価値がある・・と言うのは強がりじみているようだ。はっきり言えば、ものぐさでケチで、おまけに頑固なだけ。 歯科医の児玉先生のモットーの「自己責任、自己満足」の世界に通じるのかもね。さすが先生、良いことおっしゃる。
 カヌーの転覆(俗語で沈と言う)対策に、船底に平らなベニヤ板を取り付けたら、底の傷付き防止も兼ねて安定が良くなってきた。更に喫水線辺りの横幅を20センチ増やしてみた。改造したカヌーに、「もう沈しないから」と言い含めつつ、なおも嫌がる家内を乗せた試運転は大成功。これなら沈したら逃げ道の無い釧路湿原にチャレンジ出来る・・はずだと、北海道まで持ち込んだ。(やっと始めの話に繋がったようだ)

サロマ湖から知床峠を経て帯広市の上流域の塘路湖畔でテントを張り、湖から釧路湿原に通ずる細い水路にカヌーを漕ぎ入れていくと、上下左右から木の枝が密集して狭くなっていく。もしコース取りが間違っていたとしても、戻る事は出来ないほどの速さの水流に乗ったままで、押し流されていく。時々現れる水中から頭を出している倒木を避けつつバランスを取る。もし、あの倒木に引っ掛かったらお終いだろうな。集中していたので何分かかったか覚えていないが、やっと前方に幅の広いゆったりとした流れが現れてきた。釧路川の本流だ。ここまで来れば一安心。
 その後は殆どパドル(櫂の事)を使わずに流れに乗って下っていくだけ。周りの景色も見えるようになってきた。緊張から開放されると急に腹が減ってきたので、パンと缶コーヒー・ブレーク。頭上の大きな木の上でオジロワシが一羽、横側の草原にタンチョウの一つがいもいた。はるばるやってきて良かった・・と思った。 (2004.08.24、2005.06.13加筆)

 ところで、思わぬところから声がかかった。他ならぬwebマスターの植田さんからだ。
「カヌーを持っているから、今度与論の海でカヌーを漕ぎませんか?」
リーフの中の静かな海面でなら、初心者の私だって平気だ。よしんば「沈」したって3月でも泳げる暖かな海なのだから、海水パンツでOKだろう。
 海水の透明度は抜群なのだから、24億匹の熱帯魚の泳ぐのも手に取るように見えることだろう。ついでに短い竿を持っていって、夕食のテーブルに載る肴を狙えるかもと、あれこれ思いを巡らせているが、何と、世の中狭いものである。 (2005.07.09 亀野 稔)

 


塘路湖からいよいよ出発 他に人影は無い

釧路湿原本流 両岸は木が生い茂っていて逃げ道は無い

タンチョウの一つがい 営巣中のようだ