第二回

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前回は,与論に旅人が非常に多いことを書きましたが,今回はそんな中から子育てを終えて,退職後によそからやって来られたご夫婦のお話です。関西で長らく保険関係の会社にお勤めの後,5年前に移住された榎本さんご夫妻です。


榎本さんご夫妻

- 与論への移住はいつ頃決断されたのですか?

Mr.榎本:50才を過ぎてからダイビングを始めまして,休みを利用して最初は沖縄の慶良間諸島へ行きました。ライセンスを取る為に,ちょうど子供のような世代の人達と実技の講習をうけ,実に楽しかったのを覚えています。

会社は60才で退職しましたが,その3年前頃には沖縄近辺に住みたいと思うようになり,物件も捜しました。しかしこれはと思えるようなものはなかなか見つかりませんでした。そんな折,妻が買ってきました田舎暮らしの本に,与論のお医者さんのことが記載されていて,E-Mail でやりとりするようになりました。それがご縁で与論へ来たのですが,結局実際に住むようになるまでに4度,妻を伴って訪れました。

その間親しくなった方に優しくして頂いたことが,決め手になったように思います。


- 長らく都会で生活されていたわけですが,ご家族の意見はどうでしたか?

Mr.榎本:娘が二人おりますが,既に二人とも自立していました。旅行好きでよく海外へも行っておりましたし,上の娘は当時仕事で中国にいましたので,移住については心よく賛成してくれました。

Mrs.榎本:主人の南への憧れは,定年後のことを考え少しずつ熟成してきましたので,基本的には賛成でした。ただ私は書道教室を持っておりましたので,その整理をつける為,最初の1年半は関西と与論を行き来する生活でした。


- 想像されていたのと,実際に住むようになってからでは違いはありますか?

Mrs.榎本:主人は寒いのが苦手ですが,私は暑いのが苦手で,やはり与論の夏は相当な暑さですね。それから与論で暮らすことは台風と共に生きることだと痛感しました。

台風の後,船便の影響からお店に生野菜がなくなるのを経験して,あらためて離島なんだなと思いました。

また今では色んな方とお話をするようになり,想像以上に島外出身の方が多いのを知って驚いています。

Mr.榎本:かなりの準備期間を経て移住しましたので,多少のずれはありますが現在の生活は充実しています。

長年親しんだ趣味を持っている人は別ですが,普通サラリーマンが退職しますと,会社と言う傘が外れてしまい,それまで日課のように慣れ親しんでいたゴルフですら空虚なものになってしまうものです。また60歳で生活の場を移すというのには,多少の覚悟が必要かとも思います。

それとこれは予想外のことですが,娘が暮らす大阪の家にたまに帰りますと,町内や隣町の人までが声を掛けてくれて,与論のことを聞かれるのです。相当的外れな質問もありますが,皆さん関心がある証拠かと思いました。かつての地元ではちょっとした有名人になりました。


- 現在のご夫婦の日常生活はどんなものなのでしょうか?

Mr.榎本:在島5年目で,最初の人目惚れ期間が過ぎて,島暮らしが日常化したというところでしょうか。海が好きでこちらへ来たようなものですから,最初のころは毎日泳ぎに行きました。また呑み友達を作り,日なが焼酎を酌み交わしたりもしました。現在は中古のボートを手に入れ釣りを楽しんでおります。少しですが畑で野菜なども作りはじめました。週に1度の公民館の英会話教室,三味線教室にも通っています。

Mrs.榎本:島では我々の年代の方も皆さん働いておられるので,最初はお話する人もなく,退屈でした。今は書道から退き,趣味でパッチワークをするようになりました。

主人と三味線,エイサーのお稽古をするようになり,お友達もずいぶん増えました。

Mr.榎本:同じ田舎暮らしを選択されても,有機農業などに取り組む方などいろいろですが,私は本格的には何もしないというのが方針です。不動産の仕事をしないかというお誘いを頂いたりもしたのですが,お断りしました。パソコンと数字と会議に明け暮れた生活を人生の思い出にはしたくなかったのでこの生活を選択したわけですから,今更という思いがあったからです。


- 充実した暮らしに満足されているようですが,あえてご不満とか希望はございませんか?

Mrs.榎本:そうですね,物価はやはり都会に比べると高いですね。離島ですので運賃が加算されその分高くなるのだと思います。でも何処かへ出掛けるといっても島内では車で少し走るだけですし,無駄な出費がないのは助かります。いまは島内で手に入らないものでも,インターネットショップを利用して取り寄せることもできますし。

Mr.榎本:まあこうして与論に落ち着いてしまいますと,逆に今度はまた何処かへ旅行したくなりますね。我々は年金生活者ですので,そう贅沢はいえないのですが,ただもう少し飛行機代が安ければと思います。関西に家も残しておりますのでたまに行き来もしますし,かつての同僚が訪ねてくれたりもしますので。

つづく