尊尊我無タイトル 尊い生命へ、感謝と祈りを伝えたい KONICA MINOLTA 産経新聞70周年
暮らしに息づく伝統の獅子舞 「さつえい絵日記」はコチラ
 町の三方を囲む川から水蒸気が立ち上る。遠くの谷は霧の中に沈んでいる。霜もめったに降りない南国とはいえ、二月の朝は寒い。宿を出ると、昔ながらの町並みを残す武家屋敷通りはしっとりとたたずんでいた。

 飫肥は米の二期作も行われていたほど温暖で豊かな土地だ。江戸時代は伊東家五万一千石の城下町として栄え、明治維新の後も地域の中心であり続けてきた。だが、戦後は基幹産業の林業が衰退し、町の人口も商店の数も減っていった。

 ゆるやかな衰退。その精華ともいうべき町の歴史的たたずまいの中で、脈々と続く伝統の炎が人々に活気を与える。
 「カパーン、カパーン」
武家屋敷と獅子舞

 天空を目指し、甲高く鋭い音がどこまでも上っていく。楠から作られた獅子の雄雄しい歯が音を立て、それが見る者、舞う者、すべての心の悪霊や邪気を払いのける。

 「祭りや結婚式に獅子舞は欠かせません」

 町を見下ろす高台にある岩崎稲荷(いなり)神社の宮司、日高三友さんは語る。飫肥の人々にとって、頭を噛んで無病息災を祈り、人生の門出の露払いともなる獅子は身近な存在だ。インドを発祥とし、百獣の王が偶像化された獅子は聖獣とされ、その舞は全国に伝わる。飫肥でも神社ごとに伝わり、舞の流派も二通りある。

 各地の伝統芸能と同じように、飫肥の獅子舞も後継者難の危機に直面したことがある。保存会を結成し、老若男女を巻き込んで獅子舞を残す努力を続けた。現在では獅子舞は以前にも増して町を活気づける存在として定着している。

 「昔から伝わるものを残そうという気持ちが飫肥では強かった」

 七十年余りを飫肥で暮らす中島俊一さんの言葉どおり、この町の伝統は人々の生活の中に息づいている。保存地区に指定される武家屋敷の多くは今でも人が住む。町の大通りにある商店の多くは、雰囲気を壊さない町並みづくりのために改築の費用を自ら借金でまかないもした。

 この町の伝統が、後生に何かを伝えようとする人々の情愛によって紡ぎあげられた織物であるからこそ、冬の寒い朝に町を歩いていても、ふと暖かさに気持ちが和むのだろう。獅子舞の音が梵鐘のようにいつまでも心に深く響いた。(銭本隆行)



さつえい絵日記
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●撮影/酒巻俊介(産経新聞社 写真報道局)
【撮影データ】 6×4.5カメラ 35mmレンズ
コニカクロームSINBI200
●撮影地/宮崎県 日南市飫肥
●撮影状況:
古い武家屋敷の庭に、色も鮮やかな獅子舞の姿が現れた。

●撮影テクニック:
長い時間を過ごしてきた屋敷と庭はそれだけでいい被写体。そこに現れた獅子をバランスよく配置して、ワイドレンズで迫り時間を超えた世界を探してみたい。
「宮崎県日南市飫肥町」案内
大切にしてきたのは、
オリジナルであること。
誰に習うことなく、獅子づくりを始めたのが48年前。自ら拓いた道を歩み続け、技を磨くことに専念してきた、 一人の職人がいます。彼の情熱を支えるもの。それは唯一無比への誇りとこだわりに他なりません。
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武家屋敷と獅子舞

菜の花
鯉遊泳

武家屋敷跡
服部亭
苔むした石段

獅子の顔


城下町の猫


芽吹きを待つ木々

獅子の舞
洗濯岩
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